
渋谷のスクランブル交差点。まともに交差点を歩いたのは何年ぶりだろう。
もしかしたら、もうずうっと歩いてはいなかったかもしれない。
海外の方が多いとは思っていたけれど、感覚的には8割みたいな感じがしたことと、
何より驚いたのは、交差点に面した2階にあるスタバの窓際。
あんなに外国人が窓に張り付いて、交差点を行きかう人を写真やビデオにおさめようとしている様子に、びっくりした。そんなに価値のあるものなのか。
日本人として、日本人が海外でやる同じことが、自分の住む国であるというだけのことなんだけど
なんというのか、大柄な人たちがこぞってひとつの場所に集中して、一斉にスマホや一眼レフをむけて動作している様子に、妙に驚いた。
この驚きは、その行為そのものよりも、自分の中にあるバイアスによってあぶりだされた景色という感じだろうか。
自分のあたり前と他者の当たり前は違うのだから、当然なんだけれど、何か自分の中にあったひとつの回線が溶けたような感覚があった気がする。

毎日ランニングをしていても、走る時間がまちまちだから、見かける人、出会う人は毎日違う。
印象に残る人、残らない人。ほとんどが残っていないんだが、ひとり印象的な人がいる。
おそらく走っている時間帯と曜日の感覚を見る限り、平日に働くサラリーマン。
背が高く、すらっとした姿勢、きれいなフォームでさっそうと走っている男性。
50代かと思うが、ランナーの体つきというのはああいうことなのかと思うくらい、服も含めて、無理なくスマートに走られているのでとても印象が強い。
顔は覚えていないけれど、走る姿であの人だとわかる感じ。
朝6時40分。玄関のドアを開け、家の前の道に目をやると、あの男性が走っていく姿が見えた。
後ろ姿だったにもかかわらず、あ、あの人だ、と。
走る姿勢がきれい、とても軽やかな走り。
引き締まった姿、思わず目が追いかけた。あっという間に走り去っていったけど。
姿勢、速さ、朝の爽やかな空気が相まった景色に、私の脳に刺激が入った。
あー、あんなふうに軽やかに力強く走りたい。
その後、鏡に映った私の顔。目がきらりと開いていて笑った。脳にいい刺激が入ったんだとわかる。
理想の姿を目に焼き付けることは大事なんだ。

5か月ぶりの海では、今までにない感覚を味わった。
まずは、海に行くまでのTACOMAが快調だということ。
スムーズになんの問題もなく走る、その喜びをかみしめた。
海ではオフショアから始まり、波は小さいけれど、久しぶりの私にはちょうどいい。
初めはぎこちないかと思ったけど、思ったほど感覚は忘れていない、5か月入っていなかったという感覚がないことの方が少し驚きだった。
脳の記憶、体の記憶というのはすごいものだと感心した。
途中水平線の色が変わっていることに気が付いた。
うっすらと横線が入っているような景色。
あれはなんだろうと思いながら、ふわーっと一瞬にして海面の景色が変わっていき、風が変わった。
本当にカチッと音がなるくらいの様子で、北風から南風、オフからオンに変わった。
「あー、風がかわった…」と思った瞬間、近くにいたローカルサーファーの元気な女の子が、「スイッチはいったねぇ~」と大きな声で言った。
ああ、風のスイッチが入ったんだと、海にいないと感じられない感覚を覚えて、うれしかった。
海での感覚が日常のどこでどう影響するのかはわからないけど、自然の中に体を浸して過ごす時間というのは、やっぱりいい。
目に見えないけど、体の深部がいったん浄化されるような感覚が確かにある。
心のおり、みたいなものが、自分でもわからない微細なものの集積が、スーッと海に流れていく感じがするのだから、ありがたい。
今月は海の時間を複数回作ると決めている。